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とびだせどうぶつの森の話59(2013/2/17) 



~前回までのあらすじ~

止まない炎を盾となり受け続けるハムカツ。
ジュリーは焼き豚となった彼を投げ捨てた。
しかし爆熱のワタナベは放つ炎は尚も豚を焼き続ける。

「やはり豚が狙いか。聞きたいな、何が君をそんなに駆り立てるんだい?」

ジュリーの問いかけは爆熱のワタナベの深淵にある記憶を思い起こさせていた。
彼女は何かを見つめているのが好きだった。
時間と共に少しずつ変わる影を眺めるのが好きだった。
洗濯物が太陽の暖かさで乾いていく様を傍観するのが好きだった。
穏やかに世界を望見するのが好きだった。
彼女にとって世界の流れは速すぎた。



「こノぶタは、けいハくでくサいぶタだ!」

「それで?」



中でも炎は特別なものだった。
赤や青の色、穂の様な形も、
ほんの少しの風を受ければ移ろいでしまうような儚さも
触れた相手を焦がして変化させてしまう力強さも。
世界から隔絶されたように生きる彼女にとって、炎は自らで憧れだった。
自宅の裏庭で落ち葉や古新聞などを集めに集めて
天高く燃え上がる炎を生み出した時、彼女は思った。
これをもっと自在に操りたい。
自在に操れば炎そのものになれるのでないか?
両親にお仕置きの殴打を喰らいながらも、彼女はそう思っていた。
しかしただ何かを燃やすだけでは芸がない。
それでは放火魔でしかない。
何をどうすればもっと自分を滾らせてくるのか?
両親の監視や倫理観と戦い模索する中、転機が訪れる。
美術の授業で課題として出された風景画がうまく描けない事が
興奮すると周りが見えなくなってしまうという彼女の悪癖を爆発させた。
燃え行く風景画を見て、常ならば自らの行為を恥じていたはずだった。
高揚感。
体を異様な高揚感が包んでいた。
これだ、爆熱のワタナベは確信めいたものを掴んでいた。



「チョキさマにふさわシくない!チョキさまは、わたシを
ふカいやみかラすくっテくれた。わタしにせカいをアたえてクれた!
ワタシにわタしにワたしに」



さっそく帰宅部から美術部に鞍替えして自分で書いた絵を燃やした。
興奮し涎を撒き散らしながら爆笑する彼女を尻目に、美術室はパニックとなった。
よく考えれば美術部に入らなくても、自宅でひっそりとやればよかった。
なぜ粋がって他人に見せようと思ったのか?
わかっている。
結局自分は誰かと繋がりたいのだ。
ありのままの自分を受け入れてくれる何かにすがりたかったのだ。
先生に鼓膜が破れるくらい怒鳴り散らされ
両親にお仕置きの殴打をされながら、一つ学んだ。
後悔は先に立たない。
翌日からの彼女を待っていたのは迫害の日々だった。
誰かに嫌がらせをされたというわけではなかった。
先の奇行が元々人付き合いが苦手な彼女を更に孤立させた。
孤独には慣れている。
ただ、やっと掴んだものを世界から否定された事が何よりも辛かった。
自分はやはりこの世界で生きるには向いていないのでないか?
そうして全てが嫌になったあの日、チョキは現れた。

「あなたが放火魔さん?」

またか、もう私の事は放って置いてくれ。

「絵を見せてちょうだい」

その赤いカエルは自分の絵を見たがった。
もう絵は描かない。もう全部どうでもいい。

「キャンバスと絵の具と火炎放射器を用意したわ」

取り巻きの雌共に抑え付けられ無理やり筆を取らされた。
わかったわかった、見せてやる。
そして笑いものにしてくれ。
彼女は捨て鉢で描いた。
全てに絶念した自分を半狂乱で描いた。
描いたその絵を火炎放射器で焼き尽くした。

「すごいわ、10年に一人の逸材かも。ごめんなさい言い過ぎたわ、3年半に一度くらいかしら?」

チョキは自分と共に日々を過ごしたいと申し出た。
なぜ自分なのか?
見渡せ、お前以外は全員引いているだろ。
どう考えたって私は異常だ。

「私は人生の限られた時間でできるだけ多くの偉人に出会いたいの」

彼女の思いを私は聞いた。

「かつてこの世界に居た偉人達を、私は文字や映像でしか認識できない。
それってすごく悔しいじゃない。何かに加工された情報じゃない。
直接私は知りたいの、そういう人たちを」

ただその言葉を聞いていた。

「過去には戻れない。だから、私は今同じ時代に生きるたくさんの才能溢れる人と出会いたい。
出会ってその人の事を誰よりも深く知って、同じように私の事を知ってもらいたい。
あなたはその候補の一人」

私には何の才能もない。
あなたの思うような人間にはなれない。

「あなた未来がわかるの?だったらそれも立派な才能よ」

そうじゃない。そうじゃないんだ。

「まずはあなたの絵をコンクールに送るわ。あれ?でもよく考えたら消し炭って審査してくれるのかしら?」

私は嫌われ者で、あなたと共に居たら迷惑がかかる。

「あら、私の方が多分嫌われているわよ。陰でどんな風に言われているか。
でもどうでもいいじゃない。人生は有限なの、限られた時間は楽しむために使うべきよ。
そうねじゃあ、学校内ではできるだけ一緒にいましょう。
それであなたに直接とやかく言う人は少なくなる」

言い返せなくなった私を置いてけぼりで彼女は続ける。

「私がいない所でゴチャゴチャ言ってくる奴が居たらすぐに言ってちょうだい。
邪魔なものは完膚なきまでに排除するわ。胸を張りなさい、あなたは私という力を手に入れた。
躊躇う必要はないわ。使える便利なものをわざと使わないなんて馬鹿のする事よ」

それは救済の言葉だった。

「さぁ」

溢れ出る涙を止めることができない。

「私と共に来なさい」

私がずっとずっと待ち焦がれていた瞬間だった。



「チョキさまは、はクがいされてイたわたしニも、じゆうにトびはねる
かエるのあシをくださった。チョキさまノためになるなラ なんだッてする。
たとエそれで たモとをわかつコとになっテも」

爆熱のワタナベは叫んだ。絶対に引けない。私はあの豚を殺すのだ。
あのチョキ様が、あんな家畜の事を好きになるなんてありえないのだ。
何かの気の迷いかと思った。
すぐに目を覚ますだろう。
しかし待てども待てども彼女の態度は変わらなかった。
豚はチョキ様に相応しくない。
よしじゃあ殺そう!
豚を殺す事がチョキ様の幸せになる。

「君は豚さんの報告書によると羊ちゃんも殺そうとしていたみたいだけど」

馬のジュリーは手元から資料を出してヒラヒラさせていた。
その軽薄そうな態度が爆熱のワタナベを苛立たせる。

「そウだ、あのひツじもやきコろす。チョキさまノこいのしョうがいハ!」

チョキ様は豚を好きになった。
私はどうしても生理的にあの豚が受け付けないが、チョキ様が言うのなら多分素晴らしい人なのだろう。
応援してあげたい。あの人が望むことをなんでもしてあげたい。
チョキ様の邪魔をする奴は全部排除するんだ。
かつてチョキ様が私にそうしてくれたように。

「・・・いいね支離滅裂で素晴らしい!」

ジュリーは両手を広げて何よりも嬉しそうに宣言する。

「君のように激しく感情が入り混じった者が、稀に変異して怪物になる。
偉い人は、奴らとか化け物とか呼ぶね。
でも僕は君達にこう名付けたよ。『LOVE PHANTOM』」

それは古来より続く、誰にでも起こり得る事象だった。
ある者は愛を、ある者は憎しみを。
高まり交じり合った思いは、生き物を違う何かに変質させた。
それは進化か、退化か。

「君の言葉は滅茶苦茶だったが、愛に溢れていてた。それが聞けて満足だ」

仰々しく舞台役者のように身振り手振りをする馬に、
ついに爆熱のワタナベの怒りは爆発した。
未だ豚に浴びせ続けていた炎を止め、咆哮と共に歩みを進める。
標的変更、次は馬を焼き殺す。
ジュリーは向けられた火炎放射器を見て、笑みを浮かべた。

「僕は女の子に手を上げるのは趣味じゃない」

先ほどまで自分が放っていた炎が収束している。
それは何かを形作るように。

「選手交代さ」

爆炎を切り裂いて、炎を身に纏ったハムカツが現れる。
体を砕いて、焼き殺したはずだった。
なぜ奴がまだ生きている?
そうだ、あの豚は炎を吸収していた。
なぜそんな大事なことを忘れていたのか。
またあの悪癖が爆熱のワタナベを追い詰める。
殺す殺す、豚を殺す。
すべてはちょきさまのためだ。
わたしはなにをもってしてもはいじょするんだあのぶたを。
ちからをちからをぜんぶぜんぶやきつくすちからを。

少女の右腕は更に禍々しく変化した。


「彼女を殺すのかな?」

ジュリーのそんな問いかけに少しの間があってから、ハムカツは答えた。

「・・豚の顔は1度までだ」



対峙する、豚とみつあみの少女。
両者はまるで互いの決意を誇示するかのように叫びあった。

「ハムカツ!おヤのスネをかジるだけのかチく!」

「俺は家畜じゃない。侍だ!」

弾け飛ぶように両者が跳躍する。
刀と、火炎放射器の鍔迫り合いがいくつもの火花を生む。
必殺の思いを込めた一撃と、上下左右と縦横無尽に生まれる火花はまるで芸術のようだった。

突如、視界を紅く染め上げるほどの爆炎がハムカツを襲う。
馬鹿が、何度同じ事を繰り返すつもりだ。

「俺に焔は通じない!」

ハムカツは左手で炎を吸収し、右手に持った刀にそれを集めて次の一撃で決めるつもりだった。
しかし炎を吸収したハムカツの視界が開けると眼前に爆熱のワタナベが迫っていた。

「焔は囮か!?」

馬鹿は自分だ。
爆熱のワタナベの渾身の打撃を刀で受けた。
押し返せる、力を込めたハムカツ。
しかし少女の独特の耳を劈くような甲高い咆哮が世界を揺らし、
更に更に右腕は変異する。
負けてたまるか。
こんな豚に。
逆にハムカツは刀を砕かれた。
そして火炎放射機は勢いを失う事無く豚の体を殴り飛ばす。
再びの肋骨大破壊。
体の自由が利かず、ただゴルフボールのように飛んでいく。
消え入る寸前であったハムカツの意識を現実に留めたのは痛みではなかった。

「しまった・・あそこにはメリヤスが」

このまま行けばメリヤスがいるはずの、あの建物に直撃する。
動け!動け!頼む、俺の体よ動いてくれ!
あ、無理やわ、これ。
だってめっちゃ骨折れてるやん、俺。
関西弁は発せられる事無く、衝撃音の後レストランが崩壊した。

「メリヤス!」

全身の骨が折れ、血まみれになっても尚
豚は愛しい人の名を叫んだ。



そこには粉塵塗れになりながらも、仁王立ちするメリヤスがいた。

豚「怪我はな」
羊「スイーツはぁ?」
豚「え・・まだ買ってないです」

メリヤスは自らのマフラーを外すと、ハムカツに優しく巻く


豚「俺が出血して、体温が下がっているから温めてくれるのか?」

メリヤスは渾身の力でマフラーを締め上げる。

羊「お前のせいで汚れた。新しい奴とスイーツ買ってこいよぉ」


豚「あぐぐメリヤスは愛情表現が激しいね」
羊「マフラーは高いやつにしろよぉ」

爆熱のワタナベの打撃をかわすジュリーの視界に豚が入る。

馬「あれ?女物のマフラー巻いてる?」


豚「ジュリー、神器を具現する」
馬「またかい?暴走を抑えるのは大変なんだよ」
豚「今日は大丈夫だ。メリヤスからもらったこのマフラーの匂いを嗅げばあーいい匂い!」
馬「キモッ」



豚「あー、最高の匂い!あー!」
馬「え?何これ?ドッキリ?」
豚「あーいい!」
馬「それ・・本当に貰ったの?顔が鬱血するくらいきつく巻かれているけど」
豚「お前は女心わかんねーからな」


馬「絞め殺されそうになったんじゃなくて?」
豚「クンクン」
馬「馬鹿だけならまだしも、気持ち悪くなるとは」

ハムカツの手に紅き日本刀が具現される

豚「できた!落ち着く、いい匂い」
馬「参ったな・・・」


豚「待たせたな!この刃は、今までのやつとは違うぜ。
おれ自身の焔を元に具現したものだ」
爆「かちクゥがぁあ!!」
豚「これで仕舞いだ。ハムカツ流」
爆「キえエぇええエ!!」

豚「弐の焔」


二人が交錯し、音も無く離れる。
静寂の後、ハムカツの納刀音が響く。
それと童子に爆熱ワタナベの火炎放射器が真っ二つになって飛んだ。

豚「居合い術、絶炎」



切断面から噴出した炎は、やがて爆熱のワタナベの全身を覆いつくした。

爆「キエ・・ェエ」

燃え尽きて行く彼女を見つめる豚の背に声が届く

「何・・これ・・燃えているの?人が?」

To be continued
[ 2013/02/17 00:00 ] 掲示板シリーズ | TB(0) | CM(0)
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